とうもろこしの栄養

とうもろこしの歴史

とうもろこしの歴史は、実はとても古く、紀元前の古代文明にも記録があるほどです。私たちのもとへやってきて、そしてここまで馴染み深い食べ物となるまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

とうもろこしにも歴史あり。大昔、とうもろこしの誕生についてのお話と、世界へ、そして日本へとやってくるまでの知られざるヒストリーをご紹介しましょう。


とうもろこしの起源について

とうもろこしという植物はいつ、どこで生まれたのか。とうもろこしの起源につきましては、実のところはっきりとわかっていません。祖先にあたる野生のとうもろこしが見つかっていないのです。おそらくは、メキシコ、ボリビアなどのアメリカ大陸が原産地だといわれています。

起源説「テオシント」

とうもろこしと近縁な「テオシント」という植物が起源だという説があります。テオシントはイネ科の一年草で、メキシコからグアテマラにかけての地域に自生している植物です。別名ブタモロコシとも呼ばれ、メキシコではとうもろこし畑の雑草として生えることもあります。草丈は3〜5mで、たくさんの葉が生えており、飼料用として栽培されることもあります。テオシントもとうもろこしと同じく雄花と雌花がありますが、平たい小さな実が数個から十数個生るのみで、とうもろこしとは外見も違うようです。

「テオシント起源説」の他にも、とうもろこしと近縁な野生種同士を交配させて誕生したのではないかという説もあります。諸説ありますが、とうもろこしの起源は謎のままです。いづれにしても、現在のとうもろこしは野生では繁殖できないようです。

日本にとうもろこしがくるまで

アメリカ大陸での大規模な栽培

アメリカ古代文明とうもろこしの栽培は紀元前3000年ごろまでには始まっていたとされていて、メキシコでは硬粒種(フリントコーン)、ペルーでは軟粒種(ソフトコーン)が栽培されていたといわれています。

アマゾンを除く南北アメリカ大陸の主要農産物となり、紀元前2000年には現在のような穂形のとうもろこしになっていたといわれています。マヤ文明、アステカ文明という古代文明の中でもとうもろこしが登場しているようです。

コロンブスのとうもろこし

大航海時代イタリア出身の探検家、あの「クリストファー・コロンブス」が、1492年のキューバ島に上陸した際に、乗員の日記のなかにとうもろこしについての記録があります。ヨーロッパとアメリカとを結ぶ航路を発見したことで有名なコロンブスですが、実はとうもろこしも発見していたのです。

当時、既にアメリカ大陸の広い範囲で大規模栽培化されており、大粒軟質種・早熟耐寒種など様々な品種が生まれ、アメリカの先住民族の主要な食糧となっていたといわれています。乗員の日記のなかには「たいへん美味である」との記載もあったそうです。

世界での普及

15世紀末、コロンブスがアメリカ大陸からヨーロッパへ持ち帰って以来、とうもろこしはスペインをはじめとする西ヨーロッパ諸国、北アフリカ、中近東に急速に広まりました。

その後、とうもろこしがアジアへ伝播されたのは16世紀初めのことで、海路ではポルトガルからインドへ渡り、チベットを経由して中国、東インド諸国へと伝わりました。また、陸路で伝わった可能性もあり、トルコ、アラビア、イランなどの中近東を経て中国へ渡っていったとのことです。アフリカに伝わったのは16世紀〜17世紀といわれています。

日本への伝来

明治時代日本へのとうもろこしの伝来は、天正7年(西暦1579年)のこと、ポルトガル人によって伝えられたのが最初といわれています。

最初に定着したのは九州で、中国、近畿、東海地方と山間部を北上して、関東周辺の山地へと伝わっていったといわれています。ただし、当時日本に持ち込まれたとうもろこしは、現在では飼料用とされている実の硬い硬粒種(フリントコーン)だったということです。

日本での普及

日本でとうもろこし栽培が盛んに行われるようになったのは、明治時代に入ってからのことです。そのときに大きな役割を果たしたのが、北海道の大地でした。

北海道の開拓使が、それまでになかった新種であるスイートコーン(甘味種)、デントコーン(馬歯種)などの品種をアメリカから輸入し、北海道のとうもろこし栽培に導入したのです。その後、新品種は北海道から南下して本州にも広まり、日本での本格的なとうもろこし栽培が始まりました。

今日のとうもろこし

豊かな大地今日、日本でもとうもろこしは私たちの生活の中に溶け込み、欠かすことのできない食品のひとつになりました。食用のみならず、畜産業の飼料、工業用原料としても深く浸透しています。また、とうもろこしをエネルギーにかえる新たな試みもあります。

特にスイートコーンについては様々な品種が開発され、糖度が高く皮の柔らかい、生でも食べられるというトウモロコシも誕生しています。いままでにはなかった新しい「とうもろこし」たちが生まれ、進化していっています。